「なんで私ばっかり…」
妊活を経験した私たちが当時のことを話した時に、
笑いながらも、それぞれが口にした同じ言葉。
妊活をする、やめる。
前を向いている今がある 私たち、それぞれの選択。
石川明日香(以下Asuka)
今回の対談では
私を含め妊活していた4人でざっくばらんに話せたらなと思い、ランチに誘いました。
というのも、私が昨年末に、3番目の子どもを体外受精で出産したんだけど、
そのことをインスタに書いたら反響がすごくて。
「私もです!」とか、「同じ状況だと思ったら励みになります」
というメッセージをたくさんいただいて、
やはりまだまだクローズなことで、実は悩んでいる人も多いんだなと思って。
妊活ってデリケートな話題だから話しにくいし、
だからこそ、「実は…」みたいな感じで話すとグンと距離が縮まるよね。
今日はそんな4人が集まったランチ会です。
肥留間翔子(以下Shoko)
そうなんだよね、私は20代で妊活していたせいか、まわりに話せる人がいなかった。
Asukaさんとは妊娠時期が同じくらいで、そこから話すようになったんですよね。
Asuka
「実は体外受精で妊娠したんだ」という感じで。
みんな、タイミングから始めて人工授精、体外受精を経験したんだよね?
吉岡美奈(以下Mina)
私はタイミングから始めて、人工授精、最後は体外受精と、
休みながらも5年くらい続けて、40歳で出産。
Shoko
私は26歳で結婚してすぐに妊活したから、
みんなに「20代だし、大丈夫だよ」って言われていたけど、
人工授精しても3年できなくて、
体外受精に踏み切って、ようやくという感じ。
体外受精に進むのも怖かったし。
平井友吏(以下Yuri)
私は諦めたタイプ。
だから、今日は諦めた人代表として来ました。
子宮外妊娠で卵管を切除した経験があって、
Asukaもそうだから、そこから妊活についても相談していたんだよね。
Asuka
Yuriとは仕事で知り合ったんですが、初対面で妊活の話題で盛り上がったんです。
妊活が繋いでくれた縁というか(笑)。
気がついたらすごく仲良くなっていました。
私も子宮外妊娠で卵管を切除した後に、長男と長女を産んでいたから、
「きっと大丈夫だよ」とYuriには伝えていて。
Yuriが子宮外妊娠をしたのは、30代半ばだったよね?
Yuri
そう、はじめての人工授精の後に。
ずっとお腹が痛くて、病院に行ったんだけど、
「ちょっと出血してるだけだね」と言われて。
でもある日、ものすごく痛くて倒れちゃって、救急車で運ばれたんだよね。
処置が少しでも遅かったら命が危なかったらしい。
経過観察中も痛かったし、妊娠も怖くなって…
それから1年くらい過ぎて、37歳からまた人工授精を始めて。
Mina
それは、大変だったね。
Shoko
病院で問題ないって言われたら信じちゃうよね。
Yuri
私、妊娠のリテラシーが低くて、子宮外妊娠もまったく気づかなくて。
Asuka
いやいや、わからないよ。
私も最初は、人工授精と体外受精の違いも知らなかったし。
Shoko
私も知識がなくて。
情報も入ってこないし、病院もどこに行って良いのかわからなかったよ。
もっと早くに検査していれば、もっと知識があれば、
また違ったのかなと今も思うよ。
Yuri
私は、体外受精したら100%できると思っていたんだよね。
結果的に子宮外妊娠だったけど、
人工授精も1回目で妊娠したから、次もすぐにできるはずだって。
だからその時も体外じゃなくていいかな、って。
あの時にステップアップしていたらどうだったかな… と思うこともあるよ。
そういうのも学校で教えてくれたらいいと思わない?
Asuka
本当に!
男性にも知っておいてほしいことだし。
Mina
体外受精でも治療方法がいくつかあること、とかね。
私は“低刺激”だったこともあり、卵子が1つも取れない時もあって辛かった。
何を選ぶのが正解か、わからないよね。
Shoko
不妊治療は、治療法が合う合わないの“運”もあるよね。
私が通っていたクリニックは最短の妊娠を推奨していて、
“高刺激”だったんだけど、私の場合、採卵がすごく辛くて。
だけど、カウンセリングをしっかりしてくれたから良かったよ。
日本不妊カウンセリング学会の理事長がいたんだけど、
話をゆっくり聞いていつも励ましてくれたから、頑張れたのもあるよ。
初診で旦那さんに
「最初に言っておきますけど、
治療で圧倒的にきつい思いをするのは奥さんですから」
と言ってくれて。
Mina
妊活は、心のケアも大切だよね。
私が通っていたところはとにかく人が多くて、
診察も治療も流れ作業的な感じだった。
だから必要以上に感傷的にならずに済んだのもあるけど。
Yuri
専門病院って、待ち時間も長いよね。
2〜3時間、待たない?
それもあって、治療から足が遠のいたのもある。
妊活していたときは会社勤めしていたから、謎の半休を使っていたし(笑)。
Shoko
周囲の理解も欲しいよね。
私は同僚男性から「いつ妊娠出来るの?」って聞かれたことがあって、
「それ、こっちが知りたいよ!」
と思ったことも(笑)。
それで結局、妊活で休むことになると、
やる気がないふうに見られて、仕事を外された事もあったの。
Yuri
男性だけじゃなく、女性もけっこう厳しい。
私も、いま妊活で仕事を抜けたら前のポストに戻れないかも…
と思った時期もあったよ。
Asuka
結局そういう状況があるから、若い時に妊娠をする選択肢が狭まるのかな。
キャリアが一段落して、
「さぁ、子どもを作ろう」
ってなった時にすぐできるものでもないし。
Mina
ほんと、そうだよね。治療に向き合うには時間もいるから、
仕事がある程度落ち着いてからじゃないと難しいよね。
Asuka
ホルモン治療をすることもあるから、体調が悪くなる時もあるし。
夜中に注射を打つ時なんか、すごく悲しくなってきたこともあった。
「なんで私ばっかり」って。
Yuri
「なんで私ばっかり」っていう時期、あったよね〜(笑)。
男の人は産まないから、そこはしょうがないとは思うんだけど。
病院での検査で数値が悪いと人格も否定された気分になっちゃって、
こんなにお金と時間と気持ちと…
全てをかけても何もならないことが人生にあったかな?って。
Mina
私も「これ、なんの試練?」って、思ってたよ。
でも、背が低い高いとか、足が遅い速いとかあるように、
不妊も私の個性だと、悲しくても一旦受け入れないと
キツすぎて、前に進めなかった。
Asuka
金銭面の負担もあるしね。
私も最初の体外受精の時に、卵子が一つも凍結出来なくて、
「ダメでしたね」って診察室でサラッと言われて、
「え、お金も返ってきませんよね?」、
「返ってきませんね」と言われて… もう放心(笑)。
助成金で幾らか返ってくるとはいえ、1回に100万近くかかるから、
金銭感覚も麻痺してくるよね。
「あ、今日お会計2万円?安っ!」って(笑)。
Mina
病院が新宿にあったんだけど、
結果が悪いときは泣きながら伊勢丹に直行してたよ(笑)。
Shoko
ほんと、こんなに頑張っても報われないことってあるんだと知りました。
また、周りがどんどん妊娠する時期に入り、
私に気をつかっているのが分かって、それも辛かったな。
Mina
私は、検索魔になってたよ。
自分の年齢や検査数値とかを入れて、同じような人をいつも探してた。
Asuka
私も見てた〜!
Yuri
私も!
オフィシャルでそんなにないから、個人の方の体験ブログを読み込んでた。
Shoko
私は妊活記録をnoteで書いていたんだけど、
同じように悩んでいた方がすごく多くて、よく連絡をもらいました。
Asuka
サプリ飲んだり、ファスティングしたり、鍼灸に通ったり、
藁にもすがる思いだったから。
ちなみに、みんなの旦那さんは妊活に協力的だった?
Yuri
うちは一緒に検査を受けたり、病院の送り迎えをしてくれたり、
協力的ではあったけれど、「私ばっかり」の八つ当たりはしていたかな(笑)。
Mina
うちも協力的だったけど、やっぱり女性の方が負担は大きいよね。
Shoko
うちは最初は不妊治療に対して前向きじゃなくて、
「大袈裟じゃない? 病院行くほどなの?」という感じで。
「でも3年経ってもできてないじゃん!」って私が訴えて、
ようやく重たい腰を上げたんだけど、
後で聞いたら「検査で悪い結果が出るのが怖かった」と言っていて。
でも自分が検査に行った途端、友達にも薦めていました(笑)。
「俺はこうだった」って数値などを教えあったりしていて、
こんなふうに周りに伝わっていけばいいなと思った。
Mina
男性は、私たち以上に未知なことだもんね。
でも、今はだいぶ“妊活”も認知されてきたよね。
数年前と比べて、保険適応も拡大されているし。
Shoko
保険適応と自己負担があって、それぞれにメリット・デメリットあるみたいだけど。
どんどんよくなっているよね。
Asuka
卵子凍結の金額も昔より安くなったから、する人も増えたみたい。
Yuri
反対に私は、不妊治療をいつやめるか…
すごく迷ったけど、40歳になったタイミングで決めたんだ。
その時もすごく検索してたな。
「不妊治療 いつ やめた」とか、「不妊治療 やめどき」とか。
でも、私みたいな人、絶対いるんじゃないかなと思って。
子どもができた人が妊活を話すことはあるけど、
できなかった人が話すことってあまりないじゃない?
私みたいな人もいるんだよって分かれば気が楽になる人もいるのかなって、
だからこういう機会があれば、ぜひ!と思ってたんだ。
Asuka
Yuriのポジティブな決断と言葉に、救われる人もたくさんいると思う。
Yuri
妊活をやめた理由は一つじゃなくて、自分の年齢や環境など複数の理由がかさなって、
妊活を続けようという気持ちが自然と消滅していったに近いかも。
たくさん採卵できていたら続けていたかもしれない。
いろんなことを考えているうちに、決めたというよりも、
不妊治療に意識や行動が向かなくなって、自然に任せようと思った。
でも、高齢出産した芸能人のニュースは必ずクリックしているから、
気にはなっているとは思うんだけど。
たくさん悩んだし、やり切ったから、
今は、子どもはいなかったらいないで、しょうがないなと思っています。
とにかく健康に気をつけて、夫婦で楽しく生きようかと。
だから、妊活時に買ったサプリもまだ飲んでるよ(笑)。
Asuka
Yuri夫婦、仲良しだもんね!
Mina
私は、叶うなら2人〜3人くらい子どもが欲しかったけど、
もう体外受精する気力がないんだよね。
あの時の思いをもう一度すると思うと… 正直、恐い。
でも、同世代で2人目を妊娠した人はいいなと思うし、
体調はどうなのかな? なんて気になったりする。
だから、Yuriさんの気持ちも少しわかる気がする。
Yuri
今回話すにあたり色々思い出そうとして、
「子なし夫婦」って検索したら「かわいそう」って出てきて。
私そんなふうに思われるんだ、と思っちゃったよ(笑)。
Shoko
そんなわけないよ! いろんな家族の形があるし。
シングルを選んだ人、養子を迎えた人、みんなそれぞれだよね。
Asuka
そういうことを書く人は、立場が違うゆえの“ないものねだり”、なんだろうね。
Mina
私は、望んでいた妊娠だったけど、
子育てしていると、時間もないし気持ちに余裕もないし、
人として、女性として捨てるものもたくさんあったよ(笑)。
だから、自由がうらやましい。
お互いにうらやましいんだよね、ないものねだり。
Asuka
子どもがいなかったら、お金も時間も自由に使える。
仕事も思い切りできるのにな、と考えることもあるよね。
Yuriみたいに、夫婦仲良く楽しくいる夫婦もいるし、
いないからかわいそうって、違うよね。
Shoko
不妊治療したらいろんな人の気持ちがわかるよね。
人生に、自分じゃどうしようもできないことも起きるんだと知ったから、
考え方も柔軟になった気がします。
今までは、適齢期になったら結婚するのが当たり前、
結婚したら子供ができるのが当たり前と思っていたけど、
そうじゃない人もいるし、当たり前なんてない。
Asuka
妊娠は当たり前じゃなくて、奇跡。
初めて病院を訪れた時に、平日の昼間にも関わらず
待合室にたくさんの女性がいることに凄く驚いた。
こんなにもたくさんの女性が悩んでここにいるんだと・・・と、
あの光景を見た時のなんとも言えない気持ちが忘れられない。
「人として成長できた気がする」
なんて言ったら大袈裟だけど、
不妊治療を経験して、いろんな思いやいろんな選択があることを知り、
今では経験して良かったなと笑って話せます。
Writer / 吉岡 美奈
Photo / 神田 豊秀
肥留間 翔子
PR会社勤務を経て、フリーのPRとしてジュエリーや教育関連などの様々な企業の広報を担当。
現在育休中。
note.:https://note.com/hiruma719
平井友吏
アパレル・インテリア・化粧品業界でマーケティング職を経験。
その後、憧れだったジュエリーに携わりたいという想いから彫金学校で2年間ジュエリー制作やデザインを学ぶ。
2022年SAFONをスタート。
吉岡 美奈
Editor / Writer
雑誌やWEBで、ファッションやライフスタイルなど幅広い分野の企画・執筆を手がける。