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Feature

Interview with Asami Namura

子どもにとって海外とは、“世界”が現実になる瞬間

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子どもと海外旅行をするタイミングは、いつがいいのか。

その問いに対して、ひとつの答えとして浮かぶのが「10歳前後」という時期かもしれません。

この年齢は、まだ親と一緒に過ごす時間を自然に楽しめる一方で、世界を自分の感覚で受け取り、考え始めるタイミングでもあると言えます。
私自身、娘が9歳で初めて海外を訪れたとき、単なる観光としてではなく、「日本とは違う世界がある」という事実を、確かな実感として受け止めていたのが印象的でした。

TIAMでは実際の体験談を伺うべく、2025年末に家族でアメリカを旅した南村麻美さんに話を聞きました。


海外体験が“現実の選択肢”になる瞬間

TIAM編集長・石川


子どもにとって、海外での体験はとても大きいと感じています。

うちの子どもたちは、10歳前後でニューヨークやパリに行ったときのことを今でもよく覚えていて、「日本と全然違う」と強く感じたみたいなんです。

高校生になった娘が最近、パリの空港から市内に向かう車窓の景色を見て、「タクシーから見た景色が忘れられない、こんな世界が本当にあるんだ」と驚いたと話してくれて。まだ小学校4年生くらいでしたが、その体験がとても印象に残っているようです。
その経験をきっかけに、「もっと世界を見てみたい」という気持ちが自然と生まれて、今年の夏にはイギリスへの短期留学にも挑戦します。


やっぱり、一度でも実際に見たことがあるかどうかで、その先の選択肢は大きく変わると思うんです。
行ったことがないと“遠い世界”のままですが、体験すると“現実”になりますよね。




「今かもしれない」と思えたタイミング

南村さん


ロサンゼルスへの旅も、そうした流れの中で決めました。
もともとは2024年が結婚10周年で、「物よりも思い出を」と考えていたのですが、なかなかタイミングが合わなくて。
そんな中で、ロサンゼルスに住んでいる友人が「いつでもおいで」と声をかけてくれていたこともあり、子どもの年齢的にも「今がいいタイミングかもしれない」と思えたんです。

実際に動き出したのは10月頃からで、毎日のように航空券をチェックしていました。冬休みをフルに使う前提で、いいタイミングがあればすぐ決めようと。
価格が少し下がった瞬間があって、そのときに思い切って購入しました。
結果的に、クリスマスの25日に出発し、始業式直前に帰国する12泊14日の旅になりました。
前半は友人宅に滞在し、後半は自分たちで移動しながら過ごすスタイルに。自然も見せてあげたいと思い、キャンピングカーで旅をするという選択も取り入れました。


異文化との小さな接点が生む変化

現地では、友人の家族と過ごす時間が、子どもたちにとって大きな経験になりました。
友人の子どもは娘たちと1歳違いだったので、まるで三姉妹のように過ごしていて。
アメリカは車社会なので、登校もすべて送り迎え。その流れで学校も見せてもらったのですが、日本との違いに驚いていました。
広大な敷地、横に長い校舎、そして何より大きな駐車場——そのスケール感が印象に残っているようです。
言葉の面でも、小さな交流がありました。
友人の子は現地校に通っているため英語の方が得意で、娘たちに英語を教え、娘たちは日本語を教える。そんな“プチ英会話教室”のような時間も自然と生まれていました。
公園で遊んでいたとき、現地の子どもに意地悪をされる出来事もあったそうです。言葉が分からず戸惑う娘の代わりに、友人の子がしっかり言い返してくれたと聞きました。
「理不尽なことにはちゃんと意見を言う」そんな価値観に触れたことも、大きな刺激だったと思います。
帰国後に「英語勉強してみようかな」と言い出したのも、そうした体験があったからかもしれません。


自然の中で“暮らすように旅する”という選択

今回拠点にしたのは、L.A.近郊のインディオという街。そこから ジョシュア・ツリー国立公園 や、パームスプリングス などを巡りました。ロサンゼルスの中心部にはほとんど行かず、あえて自然の多いエリアを選んでいます。特に主人には、「大人になれば都会には行けるけれど、こういう場所は家族でないと行かないかもしれない」という思いがあったようです。
アメリカには「RVパーク」と呼ばれる、キャンピングカー専用の滞在施設がたくさんあって。車ごとそのまま泊まれるんですが、ただの駐車場ではなくて、プールがあったり、共用のシャワーがあったり、ちょっとしたコミュニティのような空間になっているんです。滞在している人同士で自然に会話が生まれたり、年配の方たちが集まってパーティーをしていたりしていて、すごく豊かな時間の使い方をしているなと感じました。ちょうど大晦日の日だったこともあって、その雰囲気がとても印象的でしたね。

キャンピングカーでの生活は、想像以上に“暮らし”に近いものでした。食事もできるだけ自炊をして、日本から持っていったお味噌や出汁パックで温かいものを作ったり。現地のスーパーで食材を調達して、みんなで料理する時間も含めて、旅の一部になっていました。夜は気温がぐっと下がるので、温かい食事がとてもありがたかったです。
印象的だったのは、車での移動時間です。日本にいると、家族4人が同じ空間にいても、それぞれ別のことをして過ごしがちですが、旅先ではそうはいかなくて。自然と会話が生まれるんです。「あの景色、日本と違うね」とか、「この植物見たことないね」とか、普段なら流してしまうことを、あえて言葉にするようになる。そういう時間がすごく豊かだなと感じました。

子どもたちが見ていた“アメリカ”

子どもたちも、それぞれに強く印象に残るものがあったようです。長女は「とにかく自然がいっぱいで、緑が印象的だった。車の中で食べた一羽丸ごとのチキンが美味しくて忘れられない」と。次女は「アメリカの色は赤やオレンジで明るかった。ニオイは芳香剤の香り!」と話してくれて、感じたものが違うのも面白いですよね。旅の途中では、家族で一冊の日記をつけていて、それぞれが感じたことを書き残すようにしていました。後から振り返ったときに、そのときの感情まで思い出せるので、とてもよかったと思います。


世界は“行って初めて現実になる”

スケジュールを詰め込みすぎなかったことも、今回の旅では大きかったです。行き先は決めていても、「何時に行かなければいけない」という予定はほとんど入れず、その日の天気を見ながら行き先を変えたり、気になる場所に寄り道したり。時間に余白があることで、家族みんなが穏やかに過ごせた気がします。もちろん、トラブルもありました。キャンピングカーのヒーターがうまく動かなかったり、慣れない運転に戸惑ったり。でも、そういう出来事も含めて、いわゆる“整った旅行”とは違う、自分たちでつくる旅だったなと思います。


子どもたちにとって、この旅がどれくらい記憶に残るのかは、今はまだ分かりません。でも、きっとふとした瞬間に思い出したり、これからの選択にじわじわと影響してくるんだと思います。海外を「知っている」かどうかで、世界の見え方は大きく変わります。そして一度その扉を開けば、それはもう“知らない世界”ではなく、“自分の中の現実”になるのだと思います。
これからも、無理のない範囲で、こうした体験を大切にしていきたいですね。



旅のあとがき

長女かえちゃん
トルティーヤが顔と同じサイズでびっくりした。アメリカの学校の子どもたちはみんな洋服が派手だったの。ピアスも開けているし、髪もカラフルだったよ!

次女ここちゃん
海から見た夕陽がオレンジ色で綺麗だったなー。あとチョコバナナシェイクがほんとうに美味しかった!

世界は、本や映画、スマホの中にあるものではなく、自分の足で触れて初めて現実味を持ち始めます。
その最初の一歩を、家族とともに踏み出すことには、きっと特別な意味があるのではないでしょうか。

あのとき見た景色や感じた空気は、すぐに言葉にならなくても、時間をかけて子どもの中に残り続ける。
そしていつか、未来の選択をそっと広げてくれる——そんな力を持っているのかもしれません。

Writer&Interview / Maddy YOKOYAMA @maddyscommunication

南村さんがおすすめするLA旅の寄り道案内

スポット
Joshua Tree National Park(ジョシュア・ツリー国立公園)

Pioneertown(パイオニアタウン)

Knott’s Berry Farm(ナッツベリーファーム)

Santa Monica Antique & Vintage Market(通称:サンタモニカエアポートフリーマーケット)

Sky Zone Trampoline Park(スカイゾーン トランポリンパーク)
https://www.skyzone.com/

ビーチ
Crystal Cove State Park(クリスタルコーヴ州立公園)

RV Park / オートキャンプ場
Indian Waters RV Resort and Cottages(インディアンウォーターズ RVリゾート&コテージ)


ショップ
Market Market


レストラン
Paco’s Tacos Cantina

南村麻美
こども ビームス ディレクター

キッズファッションを軸に、家族で楽しむライフスタイルを提案。2024年には著書『MOM & KIDS DIALOGUE 子どもと一緒に暮らしを楽しむためのヒント!』を出版。Instagramで発信する、感度の高い親子の暮らしやファッションも多くの支持を集めている。
@chami1222


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